それぞれの一歩

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 全身の鼓動が早くなっているのは、好きな人にぎゅっと手を握られているからなのか。  彼の顔から滲み出る覚悟に、よくない『もの』を感じ取っているからなのか。  彼が言う。 「椿山椿は……、──ここで死んだ」  ………………………。 「な……にを言っているのか…全然わからな、いよ……」 「椿山椿は死んだんだ」  意味がわからない。  は?  だって椿ちゃんはそこに……。 「そんな所に椿山はいない。それは美亜の妄想だ。幻覚だ」  いやだ。  違う。  そんな言葉で言わないで。  椿ちゃんはここに── 「お前だって知ってるはずだ! わかってるはずだ! お前も俺も、あいつのことが大好きだった! 親友だった! なのに美亜だけが抜け出せなくて……、俺はそんな風に幻覚を追い求めるお前を見たくなかったんだよ!」 「幻覚じゃ……」 「俺だって悲しいよ! 椿山を助けることも、お前を戻すこともできなくて! 俺は美亜と一緒がいいのに、美亜はずっと止まったままで……!」  やめて。  違う。  椿ちゃんは死んでなんかいない。  だって……だって……。
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