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だから、動揺から耐えて耐え忍んで、そして程なく担任教諭がやってきた。 「三人とも着いて来なさい。臨時の面談を行う。ほかのみんなは早く帰って」 「…………」 先生が来たところで朝日と夕日も一旦は矛を収めた。話し合う気になったというのなら僕としては助かる。 無実の罪を幼馴染から着せられるなんてことは僕は初体験だが、落ち着いて話さないことには、僕の落ち度も話の落とし所も見つからないだろう。 最初は僕からだった。と言っても、話す内容はさっきとほぼ同じ。僕は無実だ。 朝日と夕日の面談は別々だった。供述の相違があれば、そこにつけこもうという目論見があったのだとすればそれは英断だったが、両者に食い違いはなかったようである。 親はひとまず呼ばない──不確定要素が多すぎるため、まだそこまでの問題のすべきではないという判断だ。 半ば取り調べのような面談が終わって帰り際、先生に言われた。 「普通なら退学でもおかしくないけど、お前が強く否定しているのと、証拠がない、目撃者が圧倒的に少ないというので、そこまでにはならないと思う。多分ひどくて停学一か月かな。俺はお前を信じるからな」 「ありがとうございます」 結局、僕は二週間の停学に処された。 正式に決定するまでの期間、かなり周りからバッシングを受けたので、強制的に学校から遠ざけられることにはむしろ喜びすらあった。 停学は大した問題ではない。彼女に会えなくなるのは辛いが、合わせる顔がないのも事実だ。 そして、今は急務がある。 あの発言が本当に嘘だということを知っているのは僕だけだ。僕のことを本当に信じているのは僕だけなのだ。 だから、僕が自分で僕の無実を証明する。 そして、朝日と夕日に、どうしてあんなにことをしたのかを答えてもらう。 もしもそうさせてしまった原因が僕にあるのなら、治したい。 そしてもう一度前の関係に戻りたい。 嘘の理由で朝日と夕日の肩身が狭くなるのは、もっとも忌避すべき事態なので、僕自ら納得のいく理由を広めることも辞さないつもりだ。 言いがかりをつけられた相手にこんなことを思うなんて、なんだかんだ僕は朝日と夕日のことが大好きなのだ。 だからこそ解明しなければならない。こんなことで彼女たちと離れるなんて僕には耐えられない。 そしてこのままでは、彼女とも離れることになってしまう。
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