第九章

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 来る日も来る日も炎天下の中、私たちはジャガイモと向き合った。最初は説明を受けてもうまく出来なかったものが次第に出来るようになるのは嬉しいものだったけれど、あまりにも数が多いと、思考が止まって、段々、うんざりしてくるのは致し方なかった。作業に飽きた、とも言えず、黙々と機械的に手を動かす。  ああ、いつ終わるのだろうか、この作業。そう思っているのはどうやら私だけみたいで、他のみんなは結構楽しそうに作業していた。特に、青山くんは本当に楽しそう。 「俺さ、こういうの、実は好きなんだよな」  あ、そうですか…。 「楽しいな、有沙。これで金がもらえるんだから、俺は万々歳だよ」 「あはははははは~、ほんとだね」  と答えた私の頬は、きっと、引きつっていたことだろう。  普段使わない筋肉を使うため、腕はすでに筋肉痛を通り越してだるくなっているし、腰も痛い。  主にメークインを栽培しているアオヤマファーム。あまりにも広くてびっくりした。よく、東京ドーム何個分、なんていう喩えがあるけれど、ここもそういう広さなんだろうな、とだだっ広いイモ畑を眺める。
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