第九章

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 吸い込まれそうな青空、防風林を揺らして吹きゆく風、遠くに広がる地平線。郊外のわりとすぐの場所にこういう畑が広がっていることは知っていたけれど、お父さんは車を運転しないし、そもそも畑に用事がないので来たことはほとんどない。  野球部の春田くんも横川くんも、さすがチームプレーといった感じで息が合っている。ジャガイモを運ぶのも楽々こなしていた。ちなみに青山くんはへっぴり腰だ。  青山くんの従妹の綾乃ちゃんは青山くんをそのまま女子にした感じですごく可愛い。一つ下の高校二年生だけれど、学校が違う。会った途端、春田くんと横川くんの目が輝いたのだけれど、同じ学校の彼氏がバイトに来ていたため、もしや夏の恋がはじまるかも、と目論んだらしい彼らの夢は一瞬で潰えた。  しかもその彼氏の槙田くんは私たちと同じ学年で、パッと見が怖い。話してみると優しくてホッとしたけれど、春田くんも横川くんも槙田くんには近づかないようにしているみたいだった。  彼女の家ということもあり、槙田くんは一昨年から手伝いに来ているとのことで、とても作業がスムーズだ。
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