第九章

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 青山くんが一緒なのは嬉しいのだけれど、例えばウェイトレスとか、店員とか、そういうアルバイトがしたかったという本音が腰の痛さに負けて口から何度も出そうになって困った。  労働するって、甘くない。頑張れ、と自分に言い聞かしている。  夕方には家に帰り着く。青山くんが途中下車をして私の家まで送ってくれる。お父さんが仕事に行っていてまだ帰らない時間だから、何だかもう、青山くんは自分の家みたく私の家でくつろいで、風呂にも入って行く。  ときどき私を求めてくるけれど、さすがに労働の後は疲れていて、この頃は「ごめんね」と突っぱねる。青山くんは口を尖らせてむくれている。  あんまり我慢させるのは、どうなんだろう? 茉奈とか薫とか、どのくらいの頻度でしているのだろう? 訊きたくても、さすがに恥ずかしくて訊けない。  でも、なし崩し的に、求められるたびにしてしまうのもどうかと思う今日この頃だ。男の人の身体の仕組みと女はやっぱり違うから。 「今度、ね?」 「うん」  と、ちょっと寂しそうに答え、そして帰り際には必ず熱いキスをくれる。
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