第九章

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 土日は休みをくれるから、働くのは週に五日。青山くんは、土日はバンドの練習だからほとんど会えない。  日曜日の夜は、貯金箱を目の前にして、お金が貯まりそうで嬉しいから、よし、明日も頑張るぞ、と痛い腰を伸ばして翌日に備える。  視界に土のついたジャガイモしかなくて、作業にうんざりして、心の中でブツブツ文句を言いながらも、青山くんといられる夏休みを過ごすのだ。バイトが終わるまで、平日は毎日、同じ繰り返しなのだ。きっと。  そう、思っていた。  その知らせが舞い込んで来たのは夏休みも残り一週間を切った、少し曇った日のことだった。木曜日だったにもかかわらず、青山くんはその日バイトには来なかった。 〈ごめん、急用が出来た。今日はバイトに行けなくなった〉  半信半疑で私だけバイトに行った。ファームの最寄駅には春田くんも横川くんも槙田くんも来ていた。春田くんは横川くんとゲームの話をしていて、槙田くんは少し離れたところでスマートフォンをいじっていた。
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