第九章

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「うちに、来て」  青山くんは顔を上げて私を見上げ、ううん、と首を横に振る。 「何で?」 「…ごめん。少し、ひとりで考えたいことがあるんだ」 「何を?」 「…ごめん。いまは、言えない」 「何で?」 「何ででも。有沙といたら、何も考えられなくなるから」 「どういう意味?」  早く電車を降りなければ、ドアが閉まる。 「降りて、早く。ドア、閉まる」 「急に、どうしたっていうの」 「考えが決まったら、ちゃんと言うから」  ドアが閉まる寸前、仕方なく私は電車を降りた。走り去る電車を見送る。私といたら何も考えられなくなる、ってどういう意味? エッチとか、そういうことしちゃうから?   一緒に考えることが出来ないということは、青山くんの身に、私には関係ない何かが起こっているということ? 「もう、何なのよ」  悶々としたまま、私は家に帰った。
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