第九章

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 そっとしておいた方がいいのだろうか。何かに悩んでいるのだろうことは明らかなのだけれど。  待つしか、ないのかな? こういうとき、彼女って、どうすればいいのだろう。男のひととつきあうのがはじめてだから、私には前例というものがないし、どうしたらいいのかがさっぱりわからない。  やっぱり、青山くんの方から話してくれるまで、そっとしておいた方がいいのかな。  私は自分に、有沙よ、大人になれ、と言い聞かせた。  幸い、夏休みの宿題を終わらせなければならないし、やることはたくさんあった。私は夏休み残りの数日をバイトと宿題に当てた。  そしてバイトも期間が終わり、あとは新学期を迎えるだけになった。バイト中、やっぱり青山くんはどこか上の空だった。  何を考えているのかはわからないけれど、まだ考え中だということは、青山くんを見ればすぐにわかった。もどかしいけれど、待つと決めた以上、彼の負担にならないよう、そっとしておく他はなかった。
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