第1章

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 人の話をよく聞くようになった、という点については、良かったかもしれない。時々そう前向きに考えて自分を慰めた。それに、この力のおかげでこの国は争いのない、平和な国でいられるのだ。これは祖母から耳にタコができるくらい言い聞かされたことだった。新しい年が始まり、最初の宮からの言葉―― 「美しい梅が咲き、新しい年が始まりました。今年も国民の皆にとりましては、争わず、慎み深く、心安らかでありますよう。家族、近隣の者、仲良う暮されますよう。村々は互いに尊敬し合い、過分に干渉されませぬよう。来年の宮のこの言葉を聞くまで、皆これをよく守り、健やかであれ」 ――この言葉のために、国民は平和に暮らせるという。サクもこの言葉を毎年隣で聞いてきた。そして、毎年見るのだ。何万というがらんどうの目を。
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