第1章

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「座って」  きちんと正座をしたサクの前に、大宮は湯気の上がる湯のみを置く。熱いお茶はかじかんだ手にとても熱かったが、やがて心地よい温かさになった。 「おばあさま、梅が咲きました」  大宮は微笑むと、言った。 「今年は紅だそうね」  サクが目を丸くする。それを見ると大宮は、今度はからからと声を立てて笑った。 「キリが大きな声で紅と言ったそうではないの。テイが聞いていて、教えてくれたのよ。お湯を頼んだものだから」  サクは苦笑いをした。キリはきっと後で大目玉だろう。テイがあの振る舞いを見て見ぬふりをするはずがない。 「さて、紅ね」  大宮はサクの目をじっとのぞき込むようにすると、 「紅の時はどんなふうに歌うのが良いのだったかしらね。覚えている? ちょっと歌ってみましょうか」 「はい、おばあさま」  そのままサクは小一時間ほど歌の練習をし、大宮の部屋を出たとたんにお腹が鳴った。お腹が空いたな、朝餉がいつもの倍は食べられそう、と考えていると、 「サクー!」  キリがバタバタと廊下を走ってやってきた。     
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