第1章

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 ひとつは、他を必要とせずに産まれてくること。  ふたつめに、寿命が自分たちの倍ほどもあること(彼らの平均寿命は40歳)。  そして三つめ、決して自分達を飢えさせないこと。  彼女達が国を統べるようになってから、自然災害による飢饉は皆無。争いも個人の喧嘩程度にしか起きていない。他国からの侵略もないが、これは国民にとっては当たり前のことだ。「他国」は彼らには存在しないのだから。  しかしもうひとつ、彼らの知らない理由があった。彼女たちは――自分が望む望まないにかかわらず――人を操ることができた。  操る、というのは適切な表現ではないかもしれない。彼女たちの能力は同じ方向を向いているが個人差があるので、ひと言で言い表すのは難しい。口にしたことを実現させる、と言ってもいいかもしれない。何にせよ「言葉」を使うことによって他人に何らかの影響を及ぼすのだ。  サクが極端に口数の少ない訳は、ここにあった。彼女は自分の能力を恐れていた。彼女は、彼女の母親に言わせれば、とても”恵まれて”いた。”力”が、とても強いのである。     
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