過去を越えて。

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「坂巻君、こっちにおいで」 棒読み…… 彼も流石に、この只ならぬ雰囲気に気付いているのか、オレ達の顔色を伺いながら、ゆっくりと達郎さんの隣まで歩いてきた。 「…さっき話した愛ちゃんの恋人_」 「うわぁっ!」 立ち上がって、達郎さんの口を両手で塞いだ。 我ながら、素早い反応だったと思う。 「坂巻君。大晦日だし、早く帰りたいよね。引き止めちゃってごめんね」 「い、いや。大…丈夫」 完全に驚いた顔してる。ぁ…まだ口塞いだままだった。 慌てて手を離し、前を見る。 もはや、怖くて藍の顔は見れない。 「休み明けの早坂先生の講義、楽しみにしてるよ」 それでも爽やかに笑って、手を差し出してくれた。 オレも自然に握手しようと手を差し出したら、その手が宙に_。 背後から抱き締められたんだ。 鼻腔を掠める藍の匂い。 どうしても、ピンクになる頭の中… 「オレのもんに、手ぇ……グハッ」 藍のお腹に、肘鉄を喰らわした。 藍から習い始めた護身術が、まさかの場面で役に立った。 だって…… 「……オイ……」 藍が、背後からオレの顔を覗き込む。 「藍のバカ…」 「……っ!!」 バカなの?! バカなの?! バカなの?!
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