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自分より年下の年齢で、名探偵並の能力があるという"先輩"二人がいる志名川高校探偵部の部室は新校舎A棟4階にあり、戦後まもなくに建てられた校舎の設計ミスで生じた教室半分ほどの空き部屋を部室代わりにしている。
部屋の一番奥にある窓側の部長席に座り、自宅から持参した趣味である音楽鑑賞用のラッパ型蓄音機で約六年前に日本で大流行した日本語版の原曲である英語版“テネシー・ワルツ”のレコード盤を聞きながら、少し色褪せた“志名川高校卒業アルバム”を読んでいるのが二人の内の一人であり、探偵部の現部長である2年生の蒼姫雫さんだ。蒼姫さんは、絵に描いたような清楚な美人で、黒髪のロングヘアが何時も艶やかに整えられている。性格も温厚で、落ち着いた優しい声が耳に残る。米国育ちの為か、背が高くて大人びている。そして、大和撫子という言葉が文字通り似合う女子生徒は、学園内でも蒼姫さんの他には見当たらないと思ってしまう程だ。そうした面を持つ蒼姫さんだが、桁外れの洞察推理力をも兼ね備えている。
因みに蒼姫さんの従兄である叔父の蒼姫兼蔵さんも、志名川学園高校の探偵部出身。高校卒業後は単身渡米し、渡航先のサンフランシスコ湾に面する海岸の岬灯台で、連続して発生した難事件"S.O.S.信号事件"を異国ながらにして、解決へと導く。その一件で一躍有名となり、某私立探偵社に入社した。
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