Case.0*spring殺人事件(前編)

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 そして、背後から長袖セーラー服の蒼姫さんに半袖セーラー服で、こちょこちょ攻撃を仕掛け様としているのが、二人の内のもう一人であり、同じく2年生である探偵部副部長の白菊華絵さんだ。確か、初めて探偵部を訪ねた時も、白菊さんが蒼姫さんに同じようなちょっかいを掛けていた。白菊さんは茶色の地毛をしていて、蒼姫さんとは対照的なショートヘアにしている。また、白菊さんは背が低くて、蒼姫さんにはない可愛さがある。活発で姉御肌だが、少し天然。そして何よりも印象的なのは、屈託のない笑顔だ。なお白菊家では、“ジョン・S・ワトソン”と名付けたウェルシュ・コーギー・カーディガン犬が飼われている。因みに"S"は、名字の頭文字らしい。白菊さんも蒼姫さんと同様に桁違いの観察推理力を持っている。それが姉妹譲りなのか、白菊さんのお姉さんは、白菊紫音(しおん)という国内外で活躍 する若手推理作家。そして、一人っ子である蒼姫さんとは、米国時代からの幼馴染みだそうだ。  自分に気付いた白菊さんが口元に人差し指をあてて、“邪魔をしないで”と懇顔をしている。その様子を見た自分は、そっと目を閉じた。止めようにも、"セクハラセクハラ"と白菊さんが言い出して止まらない為、無理だろうと悟ったからだ。蒼姫さんには、心から申し訳ないと思っている。目を閉じて、そう思っていると、“コンコン”とドアをノックする音が聞こえた。目を開けて見ると、ドアのモザイクガラス越しに人影が映っていた。どうやら、探偵部に用事があるらしい。どうするか聞こうと、白菊さんの方に目をやるが白菊さんは、少し悔しい顔をしていた。蒼姫さんに対するこちょこちょを諦めた様だ。今日の蒼姫さんは、こちょこちょ攻撃の魔の手から間逃れた。しかし、蒼姫さんは、よく白菊さんの気配に気付かないものだと思う。それだけ、蓄音機が高性能なのか。はたまた、蒼姫さんが卒アルの閲覧に集中しているのか…。     
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