Case.0*spring殺人事件(前編)

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 白菊さんは、蒼姫さんが次のページを捲ろうとしたタイミングで、蒼姫さんの右肩を"ポンポン"と軽く叩いた。これには、蒼姫さんも気が付いた。蒼姫さんは、観終わったページに桜柄の栞を挟み、流していた蓄音機を止めて、レコード盤を取り外した。そして、後ろに振り向き、「どうしたの?」と白菊さんに声を掛ける。やはり、何も気づいていなかった様だ。白菊さんは、「誰かが来たみたい」とドアの方に指を差しながら小声で答えた。ドアのモザイクガラスを見た蒼姫さんは、「どうぞ。お入り下さい」とドアの前に立っている人へ優しく語りかける。蒼姫さんの言葉を聞いて、「失礼します」と言いながらドアが開いた。  訪ねて来たのは、大人しそうな雰囲気の男子生徒だった。蒼姫さんは、「立ち話も何ですから、どうぞソファーへおかけ下さい」と男子生徒を自分が部室中央で座っている茶色の縦長ソファーに勧める。男子生徒は、「すいません。」と言って、自分の右隣に腰掛けた。蒼姫さんと白菊さんも、自分の対にある同色の個別ソファーへ座る。そして、蒼姫さんが男子生徒に静かな声で話し掛けた。自分はメモ係である為、探偵部ノート“通称:語ラレザル”(志名川学園高校探偵部で代々、引き継がれている日記手帳)に"TANBO"の黒色ボールペンで、相談内容の詳細を書く。白菊さんは、というと男子生徒をじろじろと見ていた。 「私は、探偵部(ココ)の部長で二年生の蒼姫雫です。私の隣にいるのは、同学年で探偵部副部長の白菊華絵。そして、貴方の横にいるのが新入りの探偵部員で一年生の小早川(こばやかわ)優流(すぐる)君です。」  自分は会釈をしたが、白菊さんは何もしない。そのまま、会話が続く。 「小早川君と同じ一年生の小宮悠人(こみやゆうと)と申します。」 「小宮君は今回、どのようなご用件で、探偵部に来られたのですか?」     
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