スナック花水木

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ダブルワークは、体力のない私にはきつかった。 けれども、やめるわけにいかない。 最短2か月で終わるはずのアルバイトが、洋服を数枚増やしただけで、もう少し長くかかりそうだった。 スナック花水木は、とても繁盛した。 社長は気をよくして、閉店後のラーメンだけでなく、休みの日には寿司や割烹の店にも頻繁に連れて行ってくれた。 ある日の食事中、社長が言った。 「ユキもだいぶうちの店に慣れたようだし、どうだろう、週に4日くらいやってくれないかな?」 「えっ?」 「実は、アイが週1にしたいって言うんだよ。それに、夏休みは田舎に帰りたいらしい」 私は躊躇した。 出勤を増やせばお金が早く貯まるだろう。でも、あまりシフトを入れてしまったら辞める時に迷惑をかけてしまう… そんな考えを巡らせていると、ミホさんが 「週1か~、いいわねぇ女子大生は! 単なる小遣い稼ぎだから、無理して働く必要ないもんね」と、皮肉っぽく言った。 「酷い、そんな言い方…」 アイちゃんの表情がこわばった。でも、ミホさんは止めなかった。 「お遊び半分の学生気分で、たまーにお店に来られても迷惑なの。ま、こっちは生活がかかってるから、休んでる子の分も頑張るしかないけど。」 「こらこら、よさないか。アイは学業優先だから、気にする事はない。ユキも無理なら無理で、断ってもいいんだよ」 「私、やっと慣れたばかりなので、今まで通りのシフトでお願いします」 「そうだな、まあ宜しく頼むよ。ミホもアイも、仲良く頼むよ。 うちは皆タイプが違うけれど、それがいいってお客さんに誉められるから、俺も鼻が高いんだ」 「ミホさん、どうしたの?今日のミホさん、何だかいつもと違う感じ」 社長とアイちゃんと別れた後、私はミホに聞いてみた。 「ごめんねユキちゃん。私、ちょっとイライラしてたみたい。アイちゃんにも悪い事しちゃったな…」 「アイちゃんと何かあったんですか?」 「ううん、別に。明日アイちゃんに謝るから。ごめんね心配かけて」 私はミホさんの顔を見つめて、ハッとした。 以前よりも頬がこけていて、顔色もあまり良くない… それでもミホさんは、笑顔を作り 「じゃあ、またねユキちゃん。また来週ね!」と、手を振って行ってしまった。
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