4人が本棚に入れています
本棚に追加
ダブルワークは、体力のない私にはきつかった。
けれども、やめるわけにいかない。
最短2か月で終わるはずのアルバイトが、洋服を数枚増やしただけで、もう少し長くかかりそうだった。
スナック花水木は、とても繁盛した。
社長は気をよくして、閉店後のラーメンだけでなく、休みの日には寿司や割烹の店にも頻繁に連れて行ってくれた。
ある日の食事中、社長が言った。
「ユキもだいぶうちの店に慣れたようだし、どうだろう、週に4日くらいやってくれないかな?」
「えっ?」
「実は、アイが週1にしたいって言うんだよ。それに、夏休みは田舎に帰りたいらしい」
私は躊躇した。
出勤を増やせばお金が早く貯まるだろう。でも、あまりシフトを入れてしまったら辞める時に迷惑をかけてしまう…
そんな考えを巡らせていると、ミホさんが
「週1か~、いいわねぇ女子大生は! 単なる小遣い稼ぎだから、無理して働く必要ないもんね」と、皮肉っぽく言った。
「酷い、そんな言い方…」
アイちゃんの表情がこわばった。でも、ミホさんは止めなかった。
「お遊び半分の学生気分で、たまーにお店に来られても迷惑なの。ま、こっちは生活がかかってるから、休んでる子の分も頑張るしかないけど。」
「こらこら、よさないか。アイは学業優先だから、気にする事はない。ユキも無理なら無理で、断ってもいいんだよ」
「私、やっと慣れたばかりなので、今まで通りのシフトでお願いします」
「そうだな、まあ宜しく頼むよ。ミホもアイも、仲良く頼むよ。
うちは皆タイプが違うけれど、それがいいってお客さんに誉められるから、俺も鼻が高いんだ」
「ミホさん、どうしたの?今日のミホさん、何だかいつもと違う感じ」
社長とアイちゃんと別れた後、私はミホに聞いてみた。
「ごめんねユキちゃん。私、ちょっとイライラしてたみたい。アイちゃんにも悪い事しちゃったな…」
「アイちゃんと何かあったんですか?」
「ううん、別に。明日アイちゃんに謝るから。ごめんね心配かけて」
私はミホさんの顔を見つめて、ハッとした。
以前よりも頬がこけていて、顔色もあまり良くない…
それでもミホさんは、笑顔を作り
「じゃあ、またねユキちゃん。また来週ね!」と、手を振って行ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!