4人が本棚に入れています
本棚に追加
タエさんでダメなものが、私に何か出来るわけないのに。そう思いながら渋々とカワダさんの前に座った。
項垂れていたカワダさんが顔を上げ、私の顔をチラリと見た。
「ああ、ユキちゃんか。もう、俺の所はいいからさ、向こうへ行きなよ」
と言った。タエさんの方を見ると(いいからお喋りしなさい)と言う風に、ジェスチャーを送っている。
「うーん。それが、そうもいかなくて…」
「じゃあ、アイちゃんをここに呼んでくれないか」
一体どうしたのだろう。カワダさんは、アイちゃんの騒がしい取り巻き達とは違って、とても紳士的で穏やかな印象だったのに。
カワダさんが私に「飲めば?」と言って、自分のボトルを差し出した。
「じゃあ、いただきます」
私はグラスに氷をたくさん入れて、薄い水割りを作った。
本当はお酒ではなくジュースがいいのだけれど、ジュースはなぜか千円もした。お気に入りでもない私が頼んだら、忌々しく思うだろう。
空になっているカワダさんのグラスにも水割りを作ると、カワダさんはそれをあおるように飲み干した。
「ねえユキちゃん。アイちゃんってさ、付き合ってる男がいる?」
「そういう話は、聞いた事がないけど…」
「いるんだろうな…きっと…」
「カワダさん、アイちゃんが大好きなんですね」
最初のコメントを投稿しよう!