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余計な事を言ってしまったと、後悔した。カワダさんは、少し驚いたような顔で私を見た。
「うん。好きだ。好き過ぎて俺はおかしくなりそうなんだ。いや、もうおかしいのかも知れないな」
店の扉が開き、社長が入ってきた。
「やあ、カワダさん。毎度どうも。キタノさんも、いつもありがとうございます」
社長はふたりに挨拶すると厨房に行き、マスターとアイちゃんと何か話していた。
社長はこのビルのオーナーでもあり、最上階で家族と暮らしている。
おそらくマスターが電話をして、社長を呼び出したのだろう。
カワダさんが「帰るから、お愛想して」と言った。
タエさんが会計をしてお釣りを渡すと、奥から社長が出て来て
「カワダさん、外で、少しいいかな?」と言い、二人は外に出て行った。
それと同時にアイちゃんがフロアに現れた。
「キタノさん、ごめんなさい。せっかく遊びに来ていただいたのに、店で泣いたりして」
「気にすんなって。どうせあいつが悪いんだろ?」
「社長がカワダさんに上手く話してくれるんじゃないかな。大丈夫だよ、アイちゃん」
私達は、ウサギのように赤い目をしたアイちゃんを慰めた。
「カワダさん、アイが他の客と話すのが耐えられないから、ここを辞めてくれって言うんです」
「えーーーーっ?」
私達は皆、驚いて大声をあげた。
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