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「アイは、別にカワダさん嫌いじゃないけど、大勢の中の一人だし、そんなこと言われても困る」
「そりゃそうだ。うん」
「店が終わるといつも駅にいて、家まで送りたいって。断っているうちに終電に乗り遅れた事もあるし。家とか学校とかしつこく聞いてくるの」
「うわぁ、怖い。もう周りが見えないのね」
「この前、家の近くにカワダさんがいるのを見て、どうしてここにいるんだろうって、アイ、怖くて…」
「カワダさんは、アイちゃんとお付き合いしたいの?」
「そうみたい。でもまだ彼氏とか全然欲しくないから、ちゃんと断ったんです。アイはお客さんみんなが好きなのに。それじゃダメ?って聞いたら、カワダさん、すごく怒っちゃった…」
すると、立て続けに客が訪れて、にわかに忙しくなった。
アイちゃんはいつものように取り巻き達に囲まれて、元気を取り戻していた。
0時近くになり、社長が店に戻ってきた。
「どうでした?社長」
「カワダさん、だいぶ飲んでたけど大丈夫かなあ。カワダさんは、どうも本気でアイが好きらしい。
いや、あの人は別に悪い人間じゃないんだ。ちゃんとした所に勤めているし、うちにとっても上客だしな。
アイはカワダさんの事を、どう思っているんだい?」
「何とも思っていません。ただのお客さんです」
「そうか。それならそれでいいんだ。
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