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「こういう店でお客さんに付く仕事、今までやった事はあるかい?」
私は改めて店内を眺めた。カウンターと、ボックス席が4つあるだけの小さなスナックだった。
「…ありません」
「やめといた方がいいよ?水商売ってさ、楽そうに見えるけど、結構大変なんだから」
「もう、タエちゃんったら。静かにしてってば」
老紳士は優しそうに話しながらも、時折鋭い眼差しで私の目を見た。
「どうして水商売なんかやろうと思ったの?」
「お金が欲しいからです。勤め先からお金を借りているので、バイトをして早く返したいんです」
「そうか…じゃあ、やってみるか。週2日、時間は8時から1時までだけどいいかい?」
週2日、8時から1時…それなら会社とバイトの掛け持ちでもきつくないだろうし、2か月頑張ればお金を返せる。
私は「宜しくお願いします」と頭を下げた。すると、店の奥からバタバタとふたりがやって来て、声を弾ませて言った。
「宜しくね。私ミホ」
「私はタエ。ここはいい店よ~。皆仲がいいし、変なお客さんも来ないしね。社長は頼りになるから、安心して働けるの」
「タエちゃんたら。さっきはやめといた方がいいなんて言ったくせに」
「そうだっけ?あははは!」
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