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「ハッハッハ。まあこんな騒がしい連中だけど、皆いい子達だから何も心配する事はないよ」
「アイちゃんって子もいるの。今日はお休みだけど、ハタチの女子大生」
「うちは素人ばかりさ。でもアイは人気あるなあ。うちのナンバーワンかな」
「もう社長ったら!ナンバーワンはタエですぅ!」
「違うわよ。ミホですから!」
「ああ、悪かった!俺が悪かった!」
ふたりにまとわりつかれ鼻の下を伸ばす社長を見て、私は初めてクスッと笑った。
「源氏名は、どうするかな?本名でもいいんだけど」
会社にバレたら大変だと思った私は、咄嗟に「ユキ」と答えた。
「あー、いい感じね。北国生まれのユキちゃん。」
私はホッとしながら、店を後にした。
2か月なんてきっと、あっという間。頑張ろう。例え少しぐらい嫌な思いをしたとしても、お金のためだもの。
服装が自由な会社ではジーパンでもよかったが、夜の仕事となればそうもいかないだろう。
1980年代。世の中は好況期だったが、私のような高卒の地方出身者にはバブルなど関係ない。ファストファッションの店も、まだなかった。
借金をして引っ越した私に洋服を買う余裕はないが、仕方がないので、安物のブラウスとスカートを買った。
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