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会社を定時に上がり、スナック用の服に着替え、普段よりも濃く口紅を塗って店に向かった。
面接をした時はガラガラだったその店は、8時には満席となり賑わっていた。
長い黒髪の女の子を客が取り囲み、楽しそうに談笑していた。
「あっ、ユキさん初めまして。アイです。宜しくお願いします」
「こちらこそ、宜しくお願いします」
挨拶もそこそこに、私はタエさんの言われるままにおしぼりを出したり水割りを作ったりした。
客は全員アイちゃんのファンのようで、私は殆ど喋らず雑用だけしていれば良かった。
客はアイちゃんに一所懸命話しかけ、笑わそうとした。アイちゃんは天真爛漫に笑う、向日葵のような子だった。
初出勤のこの日は、あっという間に時間が過ぎた。
アイちゃんは終電に間に合うよう0時までの勤務で、私と殆ど話す暇なく帰って行った。
その後、泥酔してなかなか帰らない客がいて、片付けをしていたら2時近くになってしまった。
「ユキちゃん、初日なのに遅くまで悪かったね。時間大丈夫なら、ラーメンでも食って帰るかい?」
いつの間にか店に来ていた社長が言った。そういえば、お昼から何も食べていない。
「わぁい、ラーメンラーメン」
と、はしゃぐタエさん。
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