オーソリティー

2/2
前へ
/11ページ
次へ
「『えりいざ』」  オーソリティが言う  そんなのはないのだと  でも  私はみつけたもん  『えりいざ』は肌をいやし、痣を消し、シミもソバカスもなくしてくれるのだ  『えりいざ』は究極の美容液をうみ、日本女性は世界に冠たる美しさを手に入れられる…はずだった  検証実験悉く失敗  論文にはコピペが随所に発見され、応援してくれていた企業が、個人が、文字通りの手のひら返しで私への出資を打ち切った  保存庫内のサンプルまでがなくなった時、私は身内に裏切り者がいることを認めざるを得なかった  検証失敗の会見の席でひたすらわびるオーソリティのせなかをにらんでいるうちに、怒りがじりじり上がってきた  私はマイクを奪い取ったが何も思いつかなくて、悲しみは絞り出す一言に果てた  『えりいざ』はあります!  二年後。  オーソリティの子飼いの学者~もちろん男~が『りるず』を発表した。  『えりいざ』の六分の一しか美を保てないけど、その程度が民心にはそぐう。  『えりいざ』は美容効果が高すぎた。  オーソリティの支援者は美容業界の大物が多かったから、あれを世に出すわけには行かなかったのだ。  でも悔しがることはない。  同じ二年間で、私は私本来の『えりいざ』を完成したから。  向こう五十年私は老いない。  その喜びを私は分けない。  それがそう、私からの人類への、ささやかな復讐なのだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加