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「まー、ヒデト!お帰りなさい!」
玄関を開けるなり、彼女は喜びを爆発させた。玄関で一緒に待っていたのだろう、彼女の夫も後ろでニコニコしている。
「……ただいま。」
僕はそう挨拶して靴を脱ぐと、2人と一緒に居間へと向かった。口元に手をやる振りをして、自分の指に微かに残るオイルのにおいをつい確認してしまう。
「お、お帰り。」
「ヒデお帰りー!」
「お帰り。」
「兄ちゃ、おかりー!」
居間の真ん中には大きなテーブルが置かれている。その周りに座る者、走る者、煽る者、それらを眺める者。僕より3つ上のリョウタに今度大学受験をするマユミと中学生になったばかりのユイ、まだ3歳のタイガだ。僕が部屋に入った瞬間から、話し声も物音も一際大きくなる。お土産、と僕が手にしていた荷物を渡すとそれから更に騒がしくなった。
「ほらほら、皆席着いてー。」
既にお皿で満杯のテーブルに、まだ料理が運ばれて来る。
「おい、母さん、そろそろ始めよう。」
溢れそうなテーブルの惨状に恐れを為したのか、家長の鶴の一声で食事がスタートした。
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