夏至

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連絡先を交換してやり取りするようになって1ヶ月も経たない頃に、サキは自ら、自分が6歳の頃から今の養父母と暮らしているだと僕に告げた。何の因果か、僕とは違う所ではあったが彼女もまた児童養護施設出身者だったのだ。僕はその告白に心底驚いたのを覚えている。 サキがとても「そういう風」に見えなかったからだ。僕を含め、施設出身者は「何か違う」事が多い。どうしても人との距離感や、世間一般の常識と言った考え方とはズレがある場面が多々あるのだ。『普通は知っている』の「普通」が分からない環境のせいだろう。高校を卒業する頃まで、僕も冠婚葬祭にマナーやルールがあると言う事さえ知らなかった。 それに比べてサキは本当に、僕が普段の生活に感じる違和感みたいなものがある様には見えなかった。何より付き合う前から彼女の「家族」との仲の良さそうな様子を聞いていただけに、意外な事実を突きつけられた気がした。 彼女の告白を受けて、当然僕も自身の事を話した。サキの方でもこの偶然に驚いていたが、運命だねと笑って受け入れてくれた。僕がサキに呼ばれる時の微妙な反応の意味も理解したらしく、最初は「セタさん」だった呼び名がいつの間にか「セッちゃん」に変わっていた。僕の方では、本当はもう名前のヒデトで呼んで欲しいと思っているのだが。根が真面目な彼女には、6つも年上の僕の名前を呼び捨てにするにはまだハードルが高いのだろう。 養育里親と養子縁組とで形は違うが、同じくらいの年齢で家庭に入る事になった親近感もあった。お互いの事を知ってから僕達は急速に中を深めた。僕とサキは、「普通」のカップルよりもお互いをより深く理解し合えている気がした。
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