プロローグ

5/21

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/239ページ
 そして、復興が始まった。ツヨシの親は大きな建設会社の社長だ。津波が引いた後、2ヶ月程で建物は大体建て替えられた。町をあげての復興だ。  俺は震災の被害から逃れた校舎の教室で授業を受ける。5人で。教師は人型AI先生だ。 『では皆さん、知ってる英単語を言ってみましょう』AIが言う。 『日本人はな、礼に始まり礼に終わる。英語は“でぃす いず ざ ぺん”に始まり、これはペンです、で終わるんだよ』ツヨシはひねくれてるな、アハハ。  バン! AIは教壇を手のひらで叩き、『真面目に授業を受けなさい』 『おいおい、AI先生。ロボット工学三原則を知ってる?』 『飯田! 黙りなさい!』 『このロボットは壊れてない? ツヨシ君、ボコボコにしちゃいなよ』ヨウヘイがけしかける。 『ボコボコ? そっちこそロボット工学三原則を知ってるのか?』AI先生は怖い口調で言った。 ――そんな感じの楽しい日々が過ぎ、いよいよ中学生になる。卒業式はなかった。喪に服す。5人は同じ中学校に進学する事になった。  全校生徒1200人くらいの中高一貫校だ。  俺は初登校の日にメルが迎えに来た。『おはようございま~す』 『メル、おはよう。いつでも行けるよ』  2人で川沿いを歩き、中学校に向かう。 『ねえ、スカイ……今夜はお祭りがあるでしょ? 一緒に行かない?』 『地元の祭り? 良いよ。どうせ、暇だし。父さんが生きてたら、今頃はバージニアに居たのに』 『ペンタゴン? おじさん……早く見付かると良いね』 『あれから半年は経つよ。生存は絶望的だ。慎ましく遺族年金で暮らしてる』 『ご先祖様が空軍のトップだったんでしょ? スカイも将来、自衛隊に入るの?』 『そのつもりだよ。それとご先祖様って、まだ生きてるよ。俺はひひ孫にあたるのかな?』 『スカイの遠い先祖は雷電為右衛門って本当?』 『どうかな? 大関以上になれば寿命に困らず生活出来るね。角界も良いな』 『力士は向いてないよ。サッカーがいいんじゃない?』 『そうか! サッカー部に入ろう』
/239ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加