「愛してる」なんて言えない

知られざる真実

内心『大袈裟だな』と思わないでもなかったが、保を安心させるために病院を受診することにしたすみれ。
連絡してくれると言っていたけど、保が勤めている病院で診察を受けるのは初めてだから、どうしたらいいのかがよく分からない。
行く前に自分で電話して受診の仕方について聞いてみようと思い、電話番号を調べようと保の書斎に入る。
今まで病院に電話する必要がなかったため、すみれは番号を知らなかったのだ。

書斎の机の上に置かれていた大きめの白い封筒に、保の勤務先の病院の名前と電話番号が印字されている。
番号をメモして書斎を出ようとしたが、封筒の中身が気になって机から離れられなかった。
保が留守の間に勝手に覗き見することは決していいことではない。
だけどこの書斎への出入りを禁じられているわけではないし、机の上にあるということは見られても構わないということではないだろうか。
すみれに見られて困るような大事なものならば、引き出しの中とか施錠してある書棚の中とかに隠すのではないか。
それにもしかしたら学会に持っていくはずだった資料、ということも考えられる。
そう思うと封筒の中を確認しなければいけないような気がした。