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病室のベッドに静かに横たわっている健斗。
会うのは約一年ぶりだが、痩せこけて別人のように体が細くなっていた。
眠っているのか、目は閉じられたままだ。
「健斗」
小さな声で呟くように名前を呼ぶと、ゆっくりと開かれた健斗の目がすみれの姿を映した。
「すみれ……。どうして、ここに来たんだ。保に聞いたのか?」
やはり健斗と保にはすみれの知らない繋がりがあったのだ。
すみれは健斗からの問いには答えず、逆に問いかけた。
「いつから病気だったの?」
すみれの真剣な様子を見て観念したのか、健斗は自分の病気について話し始めた。
社会人になってから体調を崩すことが多くなり、すみれには内緒で通院したり薬を飲むようになった。
しかし症状は徐々に悪化して、日常生活にも支障をきたすようになってしまった。
健斗はすみれを悲しませたくなくて病気のことを打ち明けることができなかったのだ。
このままでは結婚なんてできるわけがない。
だからすみれに嘘をつき、別れることにしたのだった。
「保は医者として親身になってくれた。ここに入院して治療を受けられているのは保のおかげなんだ。あいつには本当に感謝してる」
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