救いの手

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すみれの初めての彼氏は健斗で、別れるまでの十年間ずっと健斗だけを一途に想ってきた。 だからすみれは男といえば健斗しか知らなかった。 保と付き合うようになり、いかに自分の視野が狭かったのかを思い知るようになった。 健斗はイケメンで学生時代から女子に騒がれるタイプだった。 しかし見た目とは裏腹に硬派ですみれ以外の女性と親しくなることはなかった。 保は健斗ほど目立つルックスではないものの、男女関係なく慕われていた。 健斗みたいに騒がれるというよりも、静かに見つめる隠れファンもいたようだ。 保の交流関係については詳しく知らないすみれだが、少なくとも健斗よりは友人も多かっただろうと想像できた。 健斗は世間の流行には疎く、イベントや記念日にも無関心。 それに、外で会うより部屋で過ごすことを健斗は好んでいた。 たまに外出することがあっても、行き先を決めたり計画を立てるのはいつもすみれ。 健斗にはもっと男らしくリードしてほしいと思わないでもなかったけど、二人で一緒にいられるのならすみれはそれで幸せだった。 満足できているつもりだった。 それが思い込みだったと教えてくれたのは、保だ。
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