君と眠る。

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 昔から左を向いて眠る癖があった。というよりも、そうしないとよく眠れなかった。左側を向いて、腕は二つが重ならない程度に適当に放り投げ、右足は折りたたんで、左足は伸ばす。私は、その体勢でしか安穏を得ることが出来なかった。逆に、そうするだけでいつも母の胎内に居るかのような安らぎ得ることが出来た。だから2人で眠る時には私は決まってベッドの右側へ潜り込んだし、付き合いの長い彼女は何も言わずとも私の左側へ来てくれた。そうして、いつも私は彼女を抱きしめて眠ったのだった。  にわかに目を覚ますと、夜の街明かりにほんのり照らされて、彼女は裸のまま、ベッドの上、私の足元の辺りに座っているのが見えた。肩の向こうに夜景が見える。深夜であろうこの時分に、灯りの付いている建物は少ない。ベッド脇のライトスタンドの頼りないオレンジの光は、彼女の顔をよく灯さない。まだ寝ぼけていることもあって、視界はぼんやりとして明確ではなかったけれど、彼女が煙草をふかしているであろうことだけは分かった。その手に、僅かに紫煙が立ち上るのを見たのだ。
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