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私が心中で合掌している最中も、恐ろしげなオーラを放ちながら、好野君は男子生徒に聞き返す。
「じゃあ誰なの?」
「木下だよ!アイツこっぴどく笠上にフラれてたからな」
好野君の問いに、男子生徒は顔を青くしながらも少し語調を強めて、今しがた名指しした生徒を指差した。
すると、今度は木下と呼ばれた男子生徒が動揺したように声を上げる。
「ふ、フラれてねーし!」
「フラれた…?」
そう呟いた好野君は怪訝そうな顔をし、少しオーラが収まった。
しかし、木下はその言葉自体が地雷だったようで、力一杯否定する。
「だから、フラれてねーっつーの!あんな性格最悪女こっちから願い下げだ!」
半ば怒りながら叫ばれた言葉に、好野君の眉が又もつり上がる。
「性格最悪?何それ。フラれたにせよ。フラれてないにせよあんまりな言い方じゃないか?」
「事実だろ」
「君、本当に笠上さんの何を見ていってるの?これは、フラれて当然だね。」
好野君の煽るような言葉に木下もムキになったようで、先程までとは打って変わり、一触即発の雰囲気が二人に流れ始めた。
その間に挟まれておろおろする、私を最初に氷の女と称した男子生徒は役に立ちそうもない。
やれやれ。
私は心中で溜め息をついた。
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