不幸な出来事

4/9
前へ
/78ページ
次へ
私が心中で合掌している最中も、恐ろしげなオーラを放ちながら、好野君は男子生徒に聞き返す。 「じゃあ誰なの?」 「木下だよ!アイツこっぴどく笠上にフラれてたからな」 好野君の問いに、男子生徒は顔を青くしながらも少し語調を強めて、今しがた名指しした生徒を指差した。 すると、今度は木下と呼ばれた男子生徒が動揺したように声を上げる。 「ふ、フラれてねーし!」 「フラれた…?」 そう呟いた好野君は怪訝そうな顔をし、少しオーラが収まった。 しかし、木下はその言葉自体が地雷だったようで、力一杯否定する。 「だから、フラれてねーっつーの!あんな性格最悪女こっちから願い下げだ!」 半ば怒りながら叫ばれた言葉に、好野君の眉が又もつり上がる。 「性格最悪?何それ。フラれたにせよ。フラれてないにせよあんまりな言い方じゃないか?」 「事実だろ」 「君、本当に笠上さんの何を見ていってるの?これは、フラれて当然だね。」 好野君の煽るような言葉に木下もムキになったようで、先程までとは打って変わり、一触即発の雰囲気が二人に流れ始めた。 その間に挟まれておろおろする、私を最初に氷の女と称した男子生徒は役に立ちそうもない。 やれやれ。 私は心中で溜め息をついた。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加