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──あれは、ある夕暮れ時の事だった。
西に沈む太陽は黄金色に輝きつつ周囲を茜色に染め上げ、まるで最後の一筋の光となるまで、自分から目を逸らすなという様に美しく西の空を染め続けていた。
しかし、その反対の空は少しずつ夜に近しき暝色へと染まっていく。
その事が少し名残惜しくなるくらいには美しい空だった。
そんな空を、私はぼんやりと誰もいなくなった教室の窓辺から見ていた。
すると、背後からバサバサッと紙束を落としたような音がし、振り向けばそこには校内で"良い人"と有名なクラスメイトが、今しがた落としたであろうプリントの束を慌てて広い集めていた。
そこで私はふとした疑問を抱く。
─果たして今日は彼が日直の日であったか?
答えは否、今日は他の男子生徒が日直であったはずである。
恐らく、というより確実に他の男子生徒がサボって彼に押し付けたのであろう。
容易に想像できた内容に、私は思わず心中で溜め息をついた。
全く、自身の仕事すらまともにこなせない元日直である男子生徒には呆れ果てたものである。
そして、目の前のお人好しな彼の自身にも私は呆れていた。
「あちゃー…やっちゃったなー。ごめん笠上さん。五月蝿くしちゃって。」
目の前の彼はそう言って集めたプリントを綺麗に整えながら頭を掻いた。
何とも器用な男だ。
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