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クラスメイトの好野くんと偶然の邂逅から二日たち、今日は月曜日だ。
恐らくまた話しかけられるんだろうなぁ。
なんて思いながら、無駄に重く感じる教室の扉を開いた。
「おはよう。笠上さん。」
聞こえてきた声に違和感を覚え、怪訝な表情で見上げると、爽やかな笑顔を浮かべた"男子生徒"が陽気に片手をヒラヒラとさせていた。
その男子生徒の髪は漆黒で、笑っている為、今は細められている瞳は黒曜石のよう。
そう、目の前の彼の色素は薄くないのだ…つまり…。
怪訝な表情のまま見つめ続ける私に、彼はキョトンとした顔する。
「あれ?聞こえなかった?おはよう!笠上さん!」
今度は私に少し近づき、大声で挨拶をしてきた彼のその騒々しさに私は思わず顔を歪めて言う。
「そんなに大声出さなくても聞こえる。おはよう。風見君。」
そう、彼の名前は風見爽太(カザミソウタ)。先程まで考えていた"爽やかな良い人"である好野君とはまた違った爽やかさを持つ、"爽やかスポーツ少年"の風見君だ。因みに噂では学校一のモテ男だとか…。
そんな彼は、盛大に顔を歪めている私の態度など気にした風もなく、大袈裟な口調で無駄に爽やかに言った。
「あぁ!よかった!返事がないから笠上さんが突発性難聴になったかと思ったよ!」
「………」
彼のあまりに素っ頓狂な発言に、私は表情を無に還すしかなかった。
そして無言のまま心中で突っ込む。
んなわけあるか!!
何をどうしたらそういう考えに陥るのか、普通にスルーという考えが浮かばなかったのか、等と疑問は尽きないが、いちいち突っ込むだけ無駄なので私は彼を無視することにした。
まだ何か言おうとしている、風見君から逃れるため反対側のドアへ向かおうと踵を返すと、今度は少し色素の薄い男子生徒が、爽やかな顔で私の背後に立っていた。
「げっ…」
「その嫌そうな態度、傷つくなぁ…。それはそうと、おはよう。笠上さん。」
思わず漏れた私の言葉に、色素の薄い男子生徒──もとい、好野くんは眉を下げ、悲しそうにしつつも直ぐ様ニコリと笑って挨拶をしてきた。
「………おはよう。」
私は嫌々ながらも笑顔の彼に挨拶を返した。
さて、私の現在の状況はこのクラスを代表する爽やかコンビに挟まれ、退路を断たれた状態だ。
心なしか女子生徒の視線が痛い気がする。
神よ…何と非情な事をなさる…。
等と、私は心中で現実逃避を始めた。
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