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開店
「さぁ! いらはい、いらはい。見て驚き聞いて同情。これこれ、この品々はとある男の思い出さ! まぁ聞くだけでもいいから聞いて笑ってやってよ。雲の上から蔵の奥の物まで何でもあるよ! どれも縁起物だ。そうだな。先ずはあっしとあの男の出会いについて話そうじゃないか。それにはこれ! この種さ。こいつは雨の種だ。そうよ! 男は魔術師でね、まぁ一言で表すと変人だね」
〇
その廃村に入った途端、快晴からしとしと雨になった。そばえ雨だね。何か良い拾い物はないかと思って寄っただけだから、無理せず村を出ればよかったんだが、大きな木の下で雨宿りしている、綺麗な顔の魔術師の男を見つけたんだ。どの魔術師もみんな付けているあの紋章が外套の襟首にあったからねぇ。
あっしは勘が働いた。銭になりそうな男の勘だ。
「どうも、どうも、お兄さん! それにしてもよく降るねぇ。向こうの空は快晴だってぇのに」
木の下に入って雨宿りする振りして話しかけたんだ。最初は静かに頷くだけだったが、段々と口が軽くなってきた。で、あんたは何してる人かって聞いたんだよ。
「なに。ただの人殺しだよ」
「へぇ、そりゃおっかねぇ。いったい誰を殺したんだぃ」
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