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香織はお昼休みに購買へ買い物に出ていた。
急いで家を出たため、お弁当を置いてきてしまったのだ。
「あら、あなたは――」
パンを買いおえ教室へ戻ろうとしていた矢先だった。香織に声をかけたのは二年生の先輩だった。
見知らぬ人に対し、少し身体を固くする香織。
「ああ、ごめんなさい。確か、男子バスケ部のマネージャーで入部していた子よね。えっと、初めまして。私は坂上楓。女子バスケ部の部長よ」
気さくに挨拶をする楓に対し、香織もまた、頭を下げ名乗った。
「へえ、香織ちゃんか。えっと、ちょっとお話したいのだけど」
「ごめんなさい。教室で友人が待っているので」
あら残念、と楓は肩をすくめた。
「じゃあ、今度、放課後にゆっくりお話ししましょ。えっと、連絡先は…」
楓はちらりと香織のほうを見る。
ヒュッと香織の腹の底を撫でられるような感じがした。
「あとで誠司君から聞いて連絡するわ。よろしくね」
いたずらっぽく笑い、手をひらひらさせて歩き去った。
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