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2.
「よかった。やっぱり誠司君に相談して正解だったわ」
ころころと猫のように笑う楓を香織はじっと見ていた。
香織たちがいるのは駅近くのコーヒーチェーンの一席だ。
じっと見つめる香織を見て楓がさらに目を細める。
「私の顔、何かついてるかな」
「ご、ごめんなさい。きれいな顔だと思って、目が離せなくて」
指摘されて急にしおらしくうつむく香織。それを満足げに見る楓。
確かにとても美人で、私なんかとは比べ物にならないなあと香織が思っていると楓が口を開いた。
「香織ちゃんとはね、お話してみたかったんだ。どうしてマネージャーとしてバスケ部に入ったのか。選手じゃダメなのかって」
一通り観察して満足した楓は目だけ真剣に、他は笑顔で香織に尋ねた。
えっと…と香織の目が泳ぐ。先輩の彼女を前にして先輩の近くに少しでもいられるように、なんて口が裂けても言えない。
「バスケットボールには興味があったんです。でも、運動は苦手だから…」
ふうん、と楓は肩ひじをついて手の甲であごを支える。少し首を傾け気味なところがまた、色っぽい。
思わず見ていられずに香織は飲み物に手を伸ばした。
「誠司君の近くに居たいからからじゃないんだ」
ゲホッゴホッゲホッゲホッ。楓が盛大にむせる。
「あちゃぁ、ごめんごめん。ここまで盛大にやらかすとは」
「せ、先輩は藤堂先輩と付き合っているんじゃないんですか」
え、私、ないないと楓は顔の前で手を振る。
「まあ、そういう噂が流れているのは知っているんだ。まあ、面倒だからいちいち否定して回ったりしていないだけで、あいつとはただの同級生」
あっけらかんと笑って見せる楓に香織は目を丸くする。
「ほら、うちの女子バスケ部は人数すら危うい弱小でしょ。だからすこしでも部員が欲しいのよ。だからバスケットボールが好きならぜひって思っていたんだけど、ねぇ」
にやにやと笑いを止めない楓に対してうつむく香織。
そうしていると、何かを決意した香織は勢いよく顔を上げた。
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