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「あの、半年前から藤堂先輩が真面目になったって聞いたんですけど何か心当たりとかありますか。私、多分その時期に一度、先輩と会ってて、その時は何も言ってなかったんですけど」  ふむ、と楓は手を組み考え出すふりをする。 「ちなみに、会った時はどんな話をしたのかしら」 「えっと、受験先は先輩と同じところにするとか、バスケ部に入ったとかの話を…」  へえと楓は内心再びこずるい笑みを浮かべた。  ――あいつ、だからか。 「さあね。私にも分かんないや。急に真面目にバスケやりだしたからね」  香織に対しては申し訳なさそうに肩をすくめて見せた。  そうですか、と縮こまる彼女を見て庇護欲すら湧いてくる。 「ま、何かあればお姉さんに頼りなさい。バスケしたくなったらいつでも女バスに来ていいからね。姉さんとの約束よ」  え、あ、はい。とうなずく香織をみて満足げにうなずく。  さて、そろそろとつぶやいて楓は携帯電話をとりだした。突としてどこかに電話をかける。 「え、ああ。早く出てきなさい。大事な後輩でしょ。送ってやりなよ。いい、駅前の喫茶店よ。分かるでしょ。今すぐ来なさいよ。じゃ」  それだけ矢継ぎ早に言うと携帯をしまう。 「さ、あいつは呼び出しておいたから、今日はありがとう」  いまだに顔中にクエスチョンマークを浮かべる香織を絶たせて入口に向かわせる。  さりげなく伝票は自分のところに確保してあるあたり楓の人の好さが分かる。  会計をしているところで「先輩、なんで居るんですか」という香織の驚きの声を聴いてさらに口元を吊り上がらせる。  入口のほうを向いて手を振る。さっさと行けと。  それを見た藤堂は香織を連れて駅のほうへと向かった。  それに追いつかないように気を付けながら楓も店を出た。
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