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(うん....?
何処だ、ここには?)
不意に入り込んでくる流れ落ちるような水音。
そして木々や花々に囲まれた景色。
しかし、それらは僕の知り得る植物ではなかった。
僕の知る植物に比べたら、明らかに異質。
天に向かい根を伸ばし、地面を這うように花を咲かせる植物など今まで、見た事も無い。
だが、そんな知り得る筈のない植物が不思議にも、妙に懐かしく感じられた。
(ここは日本じゃないのか?)
僕は周囲の状況を確認するべく、取り敢えず草むらを掻き分けながら、前進を開始する。
そうした理由は単純、黙って立ち尽くしているよりは、気が紛れるからだ。
だが、その直後、けたたましい滝音が響き渡り、目の前に学校のグランド並みの広大な湖が出現する。
そして褐色の人影が、水辺の中央に佇む。
(人....なのか?)
僕は思わず、その人影を凝視した。
ゆっくりと成り行きを見守り続ける事、数分ーー。
僕は漸く、それが裸の女性ーーいや、少女であることを認識する。
そして、僕は不意に気付いた。
この状況は色々な意味でマズイと。
(もしかして、この状況は僕がノゾキしていることに、なるんじゃないのか?)
僕は現状を把握し思わず青ざめる。
例え、それが不可抗力であろうとも、そんなものは言い訳になろう筈がない。
何より、この見知らぬ場所に何処の誰とも知れぬ少女が一人。
何が安全で何が危険かも分からないこの状況で、ノゾキ魔として発見されることは、多大なリスクが伴うに違いあるまい。
ならば取るべき行動はただ一つだった。
この場から離れる事、それ以外にはない。
(見付からないように離れなければ....。)
僕はなるべく音を響かせないように、四つん這いになりながら後方へと後退りする。
だが、その直後、不意に何かが叩き付けられるような水音が響く。
それと同時、水浴びをしていた少女の姿が忽然と消える。
(き、消えた??
一体、何処へーー?)
正直、悪い予感がした。
漫画が映画、もしくは小説だと大体、こういった状況の時は最悪の状況へと事が運ぶ。
つまり、良くて捕縛、悪ければ殺される。
それが、こういった状況のお約束なのだ。
そして案の定、そのお約束通りの展開が僕の身にも訪れる。
不意に首筋に突き付けられし、ヒンヤリとした金属片の感触。
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