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それは確認するまでもなく、刃物の刃先の感触。
そして、それを突き付けているのは十中八九、水浴びをしていた少女であろう。
「貴様、何者だーー?」
不意に響く、透き通るような声。
だが、そんな声の内に寒気を感じさせるような凄みが含まれていた。
恐らく、答え方を間違えれば僕は殺される。
「た、ただの高校生です。」
だが、僕は息の詰まるような緊張感のあまり、思わず考えずに微妙な一言を口走ってしまう。
(しまった!?)
しかし、後悔しても後の祭り。
今更、口から出た言葉が引っ込められる筈もない。
だが、意外にも少女は僕の言葉を聞き刃物を引っ込める。
それは僕が考えていた反応とは、明らかに異なっていた。
そして、その直後、少女が呟く。
「成る程....貴様、フェルール【帰還者】だな?」
「フェルール?」
僕は聞きなれない言葉を受け、思わず少女の言葉を復唱した。
そんな僕を見据え少女は、溜め息をつく。
その溜め息が、厄介者に遭遇したとの意味合いによるものなのか、それとも安堵によるものなのかは分からない。
だが、少なくとも少女からは僕への警戒心が、消えているように感じられた。
そして、その直後、小麦色の肌をした少女は僕に向けて、ある言葉を言い放つ。
「着替えるから、後ろを向いてろ!」
そんな当然の一言をーー。
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