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「何から話すべきかな?」
白い上品な衣類を纏った褐色の少女は、椅子に座しながら僕へと問い掛けた。
言うまでもなく彼女は、水浴びをしていたあの少女である。
そして、その傍らに温厚を絵に描いたような従者らしき女性と動きやすい青い甲冑を纏いし、騎士風の男が一人....。
だが、僕が一番、気になっている事は彼女らが何者かーーではない。
僕が一番、気になっているのは......。
「あの~話の前に出来れば、この拘束具を外して貰いたいんですけど~?」
「貴様、何を言っている?
姫様の入浴を覗き見て、命を助けて貰えただけでは不満と申すか!?」
如何にも歴戦の騎士といった雰囲気の男は、鋭い眼光を僕に向けながら、肉厚の刃を持つ剣先を僕の喉元に突き付ける。
「い、いえ....不満なんて無いです!」
僕は騎士の気迫に気圧されて、思わず自分の要望を引っ込めた。
結構、整った顔立ち故に気迫を込められると、それが逆に怖い。
ハッキリ言って、凄みがありすぎるのだ。
「剣を納めなさいクシン。
フェルール【帰還者】は帰還場所を選べないのだから、この者に比はない。」
「畏まりました姫....。」
クシンと呼ばれし騎士は、やや不満げな表情のまま剣を鞘に納めた。
僕は内心、ホッと溜め息を着きつつ少女の方を見据える。
「ありがとうございます。」
「礼は無用だ、夜月霞よ。」
「あれっーー?
名前、教えてましたっけ。」
「いや、教えてもらってはいないぞ夜月霞。
私が、お前の心を覗き見たから知っていた....ただ、それだけの事だ。」
「えっ..心を!?」
「そう驚くな。
此方の世界では、そう珍しい事ではない。」
「お言葉ですが姫様、心を読むミーティア【法式】は此方でも、珍しいと思いますが?」
温厚そうな表情の女性が、褐色の少女へと告げる。
「そうなのかココ?
私の認識では、それなりにいた気がするのだが?」
「それは王族に限った話ですよ姫様。
全体の比率から見たら、基本的に意識関与のミーティア【法式】を使える者など皆無に等しいです。
少なくとも此方の世界ではーー。
後、何度も申しておりますが、私はココではなくコッコです姫様。」
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