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2.数をかぞえて
「いいお天気ですね」
「そうですね」
昼休みの生徒指導室に、教え子(問題児)とふたりきり。
言い出しっぺとはいえ……ぶっちゃけ、不安しかありません。
「六月くん、お勉強、とても頑張っていますね」
「学生ですからね」
「それでその……」
「日野先生」
どもるわたしを黙らせるのに、六月くんは、振り向くことさえしません。
青空の下のグラウンドを、窓ガラス越しにながめているだけ。
「日野先生は、おれの交友関係を気にして、ここへ呼び出した。そうですよね」
「……はい」
「問題ありません。必要ないので」
……取りつく島もございません。
「満足しましたか。じゃあ、おれはこれで」
「ま、待って六月くんっ!」
ガタリ、と引かれるイスの音が、ゲームオーバーの足音のように思えて……もう夢中でした。
「……やめたほうがいいと思います。こういうの」
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