2.数をかぞえて

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 鈍くさいわたしでも、わかります。  六月くんは、わたしにふれてほしくないんだって。  それでもワイシャツの裾をつかんで離さないのは、わたしの、なけなしの意地なんです。 「わたし、こう見えて図太いんです。なのでっ、サンドバッグには適役かと!」 「……先生」 「あっ、こ、言葉のアヤですけど!」  物理的なのはひとたまりもないですし……聞き手なら得意って意味で! 「友達を作れとは、言いません! ただ、なにか溜め込んでいることがあるなら、吐き出してほしいです!」  えらそうな口を聞ける人間ではないですが、知ってほしいんです。 (決めつけてるわけじゃないよ! クラスメイトがそんなふうに言われてるのって、なんか、イヤじゃん……)  ()(どう)くんはそう言ってくれていました。  だから六月くんが思うより、世界は息苦しくないってことを。
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