2.数をかぞえて

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「ちが……わたしは、(みつ)()……」 「ちがわないよ。世界が忘れても、おれが覚えてる。三葉先生……アナタはふぅちゃんで、二葉ちゃんです」  1歩踏み込まれ、慌てて2歩、3歩。 「待って、むつ……!」 「それはちがう」 「きゃっ!」  4歩目で、もつれる足。  大きくのけ反った一瞬で、鬼ごっこは決着しました。 「は、なして、ください……」 「やだ。今度は、おれがアナタを抱きしめるの」 「わたしは、あなたを抱きしめたことなんて、ない……」 「ウソ」 「ウソじゃない! 教師と教え子なのよ! わたしは、あなたのふぅちゃんじゃないわ!」  豹変した六月くん。  宛先ちがいの重い愛情。  勢いに任せて、大事な大事な教え子を、わたしは突き飛ばしてしまいました。 「拒否……ふぅちゃんが、おれを……?」  しまった、と悔いるころには、なにもかもが手遅れで。 「……っふふ。はは……あはははははっ! 可笑(おか)しい、奇怪(おか)しい、オカシイ! 凍っちゃうくらいに、(たの)しいよ!」  ……夜色の前髪を掻き上げて、笑って、(わら)いつくして。     
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