0.バッドエンド

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 恐怖に凍える自分を、大きく裂けたブラウスごと、苦しいほどに抱きしめます。 「痛みに恐怖し、死を(いと)う……ヒトは、ことごとく無知だ。死とは、未知への恐怖です」  とうとう、青年の影に捕まってしまいました。  しゃがみ込む、(きぬ)ずれの音。  こわごわと見上げ、肩が跳ねます。  蒼と金の瞳が、左右で違う虹彩が、血色の逆光のなか、妖しげに輝いていたからです。 「未知を、教えましょう。そうすれば、アナタの涙も、止まるはずです」 「……厶リ、です……死んだ人間は、笑わないわ……笑えない、のよ……!」 「不適です」  絞り出した言葉は、一蹴されます。まるで、ゴミ箱に捨てられるように。 「おれが教えるのは未知であって、死そのものではありません」 「どういう、こと……?」 「それを言ったところで、理解できるでしょうか。もう限界でしょ?」 「うっ、くぁ……!」  ぐらつく意識。  なんとか保っていましたが、青年の言うとおり、限界のようです。 「い、たいッ……!」  当然です。ブラウスを裂かれて、横腹を裂かれて、平然としている人間なんて、いるはずがありません。  
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