3.恋慕という狂気

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「須藤くんは、ここになにを忘れたんですか?」  プール掃除は終えてあるとはいえ、まだ体育で授業は始まっていません。  彼が水泳部だとしても、この屋外プールに忘れものなんて、不思議なお話。  ですから、素朴な疑問でした。 「……誰にでもさ、さらしたくないヒミツって、あるよね」 「あ……わたし」 「謝んなくていいよ。ミツバっちには、教えてあげる。さっ、来て!」 「えぇっ、あの!」  ふいに腕を引かれては、足をもつれさせてでも、立ち上がるしかありません。 「ミツバっちに、アイツと会わせたげる」 「どちらさまでしょう……?」 「にゃんこ! 部活終わりに見かけたから、いままでじゃれてたんだ~」 「まぁ、猫ちゃんと――」  半ば引きずられるように、連れて行かれた倉庫で――――誰が予想したことでしょう。 「ひ……ッ!?」  凄惨な光景を、目の当たりにすると。  視界が紅いのは、夕照のせいではありません。  鮮烈な血だまりの中で、おなかを裂かれた黒猫が、ぐったりと横たわっているせい。
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