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「須藤くんは、ここになにを忘れたんですか?」
プール掃除は終えてあるとはいえ、まだ体育で授業は始まっていません。
彼が水泳部だとしても、この屋外プールに忘れものなんて、不思議なお話。
ですから、素朴な疑問でした。
「……誰にでもさ、さらしたくないヒミツって、あるよね」
「あ……わたし」
「謝んなくていいよ。ミツバっちには、教えてあげる。さっ、来て!」
「えぇっ、あの!」
ふいに腕を引かれては、足をもつれさせてでも、立ち上がるしかありません。
「ミツバっちに、アイツと会わせたげる」
「どちらさまでしょう……?」
「にゃんこ! 部活終わりに見かけたから、いままでじゃれてたんだ~」
「まぁ、猫ちゃんと――」
半ば引きずられるように、連れて行かれた倉庫で――――誰が予想したことでしょう。
「ひ……ッ!?」
凄惨な光景を、目の当たりにすると。
視界が紅いのは、夕照のせいではありません。
鮮烈な血だまりの中で、おなかを裂かれた黒猫が、ぐったりと横たわっているせい。
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