3.恋慕という狂気

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(最近、先生たちが警戒してる動物虐待犯――)  ……いやな予感が、脳裏をよぎりました。  生々しい血の海が、あまりに新しくて。 「す、須藤くん! 犯人がまだ近くにいるかも。ここは危ないわ。早くお家に帰りなさい!」 「ミツバっち……」 「なんて酷い……先生方に、連絡を」 「――だぁめ」  黒猫へ駆け寄ったわたしの肩に、トン、と置かれる手があります。 「ほかのヤツらに言っちゃダメじゃん。俺たちだけの、ヒミツなのに」  ……背後から、耳朶(じだ)にささやきかける影。  思考が止まり、カクンと膝が折れます。  血だまりが跳ねて、へたり込んだ手のひらに、生温かい感覚。  錆びた鉄くさい液体の正体は、見なくてもわかります。 「血に濡れても、ミツバっちは綺麗だなぁ……」  恍惚(こうこつ)としたささやきの、主も。
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