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はっ、はっ、と虫の息を繰り返すわたしを、ふいに伸びてきたしなかやな腕が、仰向かせ――
――ちりん。
鈴の音と、謎の浮遊感。
(ブレス、レット……?)
青年の右手首に鈴が提がっていて、抱きあげられたのだと理解するのに、何十秒を浪費したことでしょう。
「じっとしててね」
……酷く優しい声音でした。
わたしの膝裏を支えた青年は、踏み出すのです。
腕が血に染まるのも、気にはとめずに。
(もう……ダメね)
血を流しすぎたようです。
青年が心変わりをしたところで、救急車が到着する7分の間に、わたしは事切れてしまうでしょう。
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