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ひっくり返る天地。
パシャン、と水面に叩きつけられる感触と、身体が沈んでゆく感覚。
鼻につく、次亜塩素酸ナトリウムのにおい。
せめて、と1回でも呼吸することさえ、青年は許してはくれませんでした。
先ほどとは比べものにならないくらいに、わたしの唇に、唇を押しつけて。
細かな水泡のひと粒さえ入ることを許さない抱擁は、まるで、ぐずる子供のようでした。
かろうじてこじ開けた瞳で、血濡れの空へと手を伸ばし……揺らぐ水面を抜けるより先に、華奢な指で、絡めとられてしまいました。
なにもない蒼の世界で、夜色の髪だけが、わたしの頬をくすぐって……なんだか無性に、安堵してしまったのです。
イタミも、クルシミも、
なにも、わからない。
だれにもジャマされず、
ただただ、
しずんでゆくだけ。
ふかく、
ふかく、
ふたりだけで。
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