1.異彩な教え子

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1.異彩な教え子

「センセイ……センセイってば!」 「はひィッ!?」  もともと、人一倍臆病なわたしです。  ふいに話しかけられると脊髄反射で返してしまうのが、困ったクセ。  いつものように声を上ずらせてから、教壇に立っていることを理解します。 「あれっ……わたし、濡れてない……というか、生きて……?」  首をひねった3拍後に、どっとわき起こる笑い。 「先生、ホームルーム中に寝てたの~?」 「今日は日本晴れですよー」 「おいおいみんな、センセイは研修やらなんやらで、オツカレなんだよ。察してさしあげろ」  ……やってしまいました。  居眠り、ですって? なんたる不覚……!  これは名誉挽回せねばなりませんが……はて、どこまで進めたかしら? 「出欠確認が途中だよ。ちなみに俺からね、ミツバっち!」 「――!」  またも飛び跳ねたのは、ふいをつかれたからでも、心を読まれたからでもありません。 (ミツバっち……)  それはわたしの、日野(ひの) (みつ)()の愛称に違いありません。  ならばどうして、違和感を覚えるのでしょう?  かみ合わない歯車のように、もどかしい……  
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