35人が本棚に入れています
本棚に追加
松本さんの後ろ、教室最後尾の席から、静かな声が上がります。
……窒息、するかと思いました。
当然なのかもしれません。右は蒼、左は金と、左右で色の違う瞳に、見つめられてしまっては。まるで、深海と満月のよう。
そして夜色の猫っ毛を持つ彼は、あまりに整いすぎていて、真新しいブレザーがちぐはぐに思えます。
「…………六月、くん」
「はい」
やっとのことで絞り出した声に、青年は眉ひとつ動かさず、淡々と受け答えました。
終始無表情だったのに、わたしにはなぜか、彼が嘆息しているように見えてならなくて。
……本来なら、もっと早く気づくべきだったのです。
六月くんに関して、なにも茶々を入れない教え子たちの、違和感に。
最初のコメントを投稿しよう!